被曝リスクは安心レベル!原発御用による福島原発の炉心調査方法を大胆提案


第2章 「隠す技術」 原発・被曝に関するリスクを隠して安心

不都合な情報隠し@対数グラフマジック
情報過多社会での重要な視点と「不都合な情報隠し」

大量の情報に触れる機会が多い現代社会において、情報の取捨選択は重要であろう。それは、東日本大震災に起因する原発事故でも同様であった。

原発御用・反御用の主張は、それぞれの立場の正当性をサポートする(根拠付ける)様々なデータに支えられている。その結果、お互いが「自分にとって都合の悪い情報・データ」を採用せず、議論がかみ合わないことも多く、妥協点もさえも見つからないことが多い。

そのような混乱の中において最も重要な視点は、「個人の判断で行動する」ことであろう。
価値観や状況が個人によって異なるからである。そして、その行動基準に寄与する重要な要因の1つは、「全ての項目に関する正確・誠実な情報」である(もちろんそれを見分ける力も重要ではある)。

しかし、今回の東日本大震災では、その「全ての項目に関する正確・誠実な情報」が、歪められ、不誠実であり、いまだに達成されていない。つまり、「不都合な情報隠し」が続いているのだ。

そこで、新たな視点を盛り込んで展開された「不都合な情報隠し」を紹介する。
筆者が思わず笑ってしまった主な「不都合な情報隠し」は、「対数グラフマジック」、「不適切な解説」、「不適切な発表」、「モニタリング数値隠し」であった。 まずは、対数グラフマジックから述べる。

対数グラフによるマジック

「対数グラフマジック」とは、産経新聞が公開していたセシウム降下量の比較記事で、対数グラフを用いているためグラフを正確に読めていない、印象操作が可能となる恐れがあったマジックのことである。

産経新聞のその記事のタイトルは、「1960年代と同水準、米ソ中が核実験「健康被害なし」 東京の放射性物質降下量」であり、注目したい記事部分は、以下の通り。
「東京電力福島第1原発の事故で現在、東京の地表から検出される放射性物質(放射能)の量は事故前の数万倍に上る。しかし1960年代初頭にも、海外の核実験の影響で、日本でも同レベルの放射性物質が検出されていた。」

つまり、震災後の東京と1960年代初頭の降下物量は同レベルであるという。
元の図は検索先で見てもらうとして、図の説明を先にしよう。

その図は、核実験時代以降のセシウムの降下量の変動を片対数グラフで示したもので、目盛り間の距離を同一にして、目盛りごとに値が10倍になる同じ対数目盛(0.001、0.01、0.1、1、10、100、1000、10000)で示されている。対数グラフは、極端に範囲の広いデータを扱える利点があり、横軸の目盛を範囲の狭いデータに、縦軸の目盛(対数目盛)は極端に範囲の広いデータに用いることが一般的。

一方、目盛幅が同じだが実数が異なるため、一般市民には数値の差が分かりにくい。1〜10の範囲の差は9であるのに対し、1000〜10000の範囲の差は9000となる。

図を見て、何が分かるか考えていただきたい。

原発御用の比較術

上記の図と記事はあまりに低レベル・・・いや、新しいグラフの読み方を提示した先進的な記事内容であることが分かる。
この記事には2つの問題点がある。1つは、核実験時のピーク時の降下物量とピークを過ぎた4月の東京の降下物量を比較して、「同レベル」としている。もう1つは、総量の比較をしていないのである。たとえば、核実験時vs震災後、震災前vs震災後(年数が異なるが)の比較をしていない。

例えるならば、生後6ヶ月の赤ちゃんの体重と大人の足の重さを比較して、「赤ちゃんと大人の重さは同じ」と言っているようなものだ。これは、比較ではなくて、言葉遊びという。まともな理系の研究室であれば、1時間は怒られるレベルである。

有志が分かりやすく修正したグラフは下記の通りとなる(文字が見にくいがイメージは掴めるはず)。

図 降下物量の比較 (作成者不明)

原発御用の比較術

この記事と関連した衝撃的な発言もある。
日本の最高学府の教授の「核実験時は今の1万倍のセシウムが降っていた」発言だろう。

産経の記事内の「90年代以降、1カ月の地表への降下量はピーク時の1万分の1以下となる0・01ベクレル程度に落ち着いていた。」や他の報告書などに基づいての発言だと考えられる。

この発言には、大きな勘違いがある。「今」は震災前のことであるので、震災後に「今の1万倍」はミスリードであろう。また、それに伴って、震災後の総量と核実験時の総量との比較ができていない(ピーク時も同様)。場所や期間の比較も不明確であった。

グラフが示す本質を掴めない教授が最高学府で教鞭を取っている事実は、やはり世界に誇るべき原子力学界のポテンシャルを示唆しているといえる。

なお、東京大学の押川教授がより詳しい図を作成して公開されているので、全体像を把握するために、その図をご覧いただきたい。

図 降下物量等の比較(東京大学押川教授作成)


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